高校時代、僕の頭に 突如として浮かんだ言葉があった。
それが、「留学」。
理由は、正直いまだに分からない。 ただの気まぐれだったのかもしれない。
でも確かに、そのとき一瞬、 「海外行くのもアリかもな」 と思ってしまったのだ。
——ただし、その0.5秒後に猛省した。
「いやいや、ないない。絶対無理」
当時の僕は英語が大の苦手。
授業中はいつも、 「なんで英語なんてやらなきゃいけないんだよ」 と教科書を睨みつけていた。
心の中で、強めにこう誓っていた。
「意地でも、絶対に日本から出ない」
……うん。 見事なまでのフラグである。
そのあと、どうなったか?
——速攻で日本、出ました。
人生、本当に何が起こるか分からない。
ある日、ちょっとだけ勇気を出して、 進路面談や教室で言ってみた。
「僕、アメリカの大学に行きたいんだよね」
その瞬間、 教室の空気がピキッと止まった。
次の瞬間、ドッと笑われた。
先生も、クラスメートも、全員大爆笑。
「いやいやいや(笑)」
「お前が?」
「絶対無理でしょ!」
「英語のテスト、いつも一桁じゃん」
「まず、日本の行ける大学を探せよ」
中には、トドメを刺すように ストレートに言ってくるやつもいた。
「お前なんかが、行けるわけないだろ」
……まあ、普通に考えたら大正論だ。
- 偏差値40の高校。
- 英語の実力はほぼゼロ。
- 誇れる実績もなし。
むしろ「行ける」と思っている僕の頭の方が、 どうかしているレベルだった。
最初の壁(奇跡のマークシート事件)
アメリカの大学に行くには、 当然、英語のテストを受けなきゃいけない。
立ちはだかったのは、「TOEFL」という超難関。
記念すべき、第1回目に受けたスコアは……
「360点」。
……いや、低すぎる。 絶望的な数字である。 自分でも「終わったな」と真顔になった。
でも、なぜか諦めきれず、 数ヶ月後に2回目のテストを受けた。
その結果が、これだ。
「460点」。
……いや、上がりすぎである。 今度は周りが大パニックになった。 先生も友達も、「え?何が起きたの?」という空気。
正直に白状しよう。
完全に、奇跡(神がかった勘)だった。
もちろん自分なりに勉強はした。 でも、それ以上に運が良すぎたのだ。 このテスト、ありがたいことに大半が選択式。
つまり、当てまくった。
「なんか、これっぽいな」 という野生の勘だけでマークシートを埋め尽くした結果、 なぜか点数が跳ね上がった。
人生で一番、脳細胞の「勘」が冴え渡っていた瞬間。 でも、この奇跡の数字を見て、僕は思った。
「……これ、いけるかも」
根拠はゼロ。 でも、数字が僕の背中を押していた。
バカでも、心に火がついた瞬間
正直に言うと、あの日みんなに
「無理でしょ」
「お前が?」
と笑われたことは、 思っていた以上にずっと、心に刺さっていた。
悔しかった。
めちゃくちゃ恥ずかしかった。
でも同時に、こうも思ったのだ。
「……本当に、無理なのかな?」
その疑問が、どうしても頭から消えなかった。
そして少し時間が経ってから、静かにこう確信した。
「もしこれで本当に行けたら、 めちゃくちゃ面白い人生になると思わない?」
その不敵な好奇心が、すべての始まりだった。
毎日、コピペしたような同じ景色の田舎町。
同じように過ぎていく退屈な時間。
その中で、ぼんやりと
「このままで終わりたくない」
という気持ちが膨らんでいった。
「海外に行ったら、何か変わるかもしれない」
英語なんて、完全になめていた。
今思えば、信じられないくらい甘い考えだ。
でも、その「圧倒的な見通しの甘さ」があったからこそ、
恐怖を知らずに一歩を踏み出せたのも、また事実だった。
あの日、笑われたこと。
それはただの黒歴史じゃなく、僕の心に小さな火をつけた。
大きな炎じゃない。
でも、絶対に消えない、頑固な火だ。
「やってみたい」
その気持ちに、人生で初めて、
ちゃんともぎ取られる覚悟で向き合った瞬間だった。
物語の始まり
このときの僕は、まだ何も知らない。
このあとアメリカに渡り、 言葉の壁にぶち当たって、
何度も何度も盛大に失敗すること。
注文通りのハンバーガーすら買えず、 何度も心がバキバキに折れそうになること。
それでも、あきらめずに突っ走った結果、
たくさんの温かい人に支えられて、 少しずつ、
少しずつ前に進んでいくことを。
そして、気づいたときには
—— アメリカの大学を卒業し、 まさかの「修士号(大学院)」まで取ることになるなんて。
当時の偏差値40の僕に言っても、 「寝言は寝て言え」と一蹴されるだろう。
人生は、本当に分からない。
これは、特別な天才の話じゃない。
頭がいいエリートの成功法則でもない。
ただ、一つの小さな「やってみたい」を信じて、
「なんとかなるっしょ」
と笑って走り出した、 一人のポンコツのリアルな泥臭い物語だ。
もしあのとき、周囲の笑い声に負けてやめていたら。
この先に待っている最高の景色は、 きっと一つも見られなかった。
これは、
「偏差値40で笑われたやつが、世界に挑戦した話」
さあ、ここからすべてが動き出す。



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