「好きな人にはすぐ返信したいし、素直に気持ちを伝えたい!」
恋愛では、ごく自然なことに思えますよね。
でも、国や文化が変わると、そんな素直さが思わぬ形で受け取られることもあるようです。
今回ご紹介するのは、ブラジル出身の僕の知人、アラン(仮名)の体験談です。
アランはブラジル最大の都市サンパウロで育ち、英語を学ぶためにカナダのトロントへ渡りました。安全で暮らしやすい環境が気に入り、そのまま約10年間、カナダで生活してきた男性です。
ブラジルで育った彼が、カナダでの恋愛を通じて感じた文化の違いとは、いったい何だったのでしょうか?
アプリ前提の「面接デート」?自然な出会いとの違い
アランによると、ブラジルでは友人の紹介や、近所のバーなどで自然に人と出会い、そこから恋愛に発展することがよくあったそうです。
もちろん、ブラジルでも出会い方は人それぞれ。それでも、彼にとっては日常の延長線上で恋が始まる感覚がありました。
一方、トロントではマッチングアプリを使った出会いが中心になり、最初から「デートをする」という目的で相手と会うことが増えました。
初デートはコーヒーにするのか、それともディナーにするのか。
そんな話し合いを重ねてから会うスタイルに、アランは少し戸惑ったそうです。
まるで就職活動の面接のように、相手を評価したり、自分をアピールしたりしている気分になったのだとか。
自然に会話が始まり、気づいたら惹かれ合っていた。そんな出会いを期待していた彼にとって、恋愛を始めるまでの手順が多く感じられたのでしょう。
マッチングアプリは、普段なら出会えない人とつながれる便利な方法です。ただ、出会うこと自体が目的になってしまうと、相手を知る前から「自分に合うかどうか」を判断しすぎてしまうこともあるのかもしれません。
すぐ返信したら「必死すぎる」!?
アランが特に苦労したのは、メッセージのやり取りでした。
ブラジルで暮らしていた頃は、好きな人ができたら素直に好意を示し、メッセージにも早く返信することを大切にしていました。
好きだから連絡したい。相手から連絡が来たらうれしいから、すぐに返す。
僕たちにも、そんな経験はありませんか?
ところが、カナダで同じように振る舞うと、相手によっては「必死すぎる」「簡単に手に入りそう」と受け取られることがあったそうです。
彼には、それがどうにも理解できませんでした。
「好きなら好きって言えばいいじゃないか。どうして、わざと返信を遅らせなきゃいけないんだ?」
そんな不満を感じていたといいます。
恋愛では、相手に好かれたい気持ちが強くなるほど、返信のタイミングや言葉の選び方が気になってしまうことがあります。
すぐに返信すると重いと思われるかもしれない。反対に、返信を遅らせたら興味がないと思われるかもしれない。
考え始めると、メッセージひとつ送るだけでも疲れてしまいますよね。
ただし、カナダや北米の人がみんな駆け引きをするわけではありません。アランが出会った相手の中には、彼の率直なコミュニケーションに戸惑う人もいた、ということです。
彼にとっては、相手の気を引くために自分を偽るよりも、自然体で接するほうが大切でした。
アジア系女性との交際で知った、愛情表現の違い
カナダで暮らすうちに、アランは韓国、日本、台湾、ベトナムなど、アジアにルーツを持つ女性たちとも交際するようになりました。
彼によると、親切に接したり、気持ちを率直に伝えたりする自分のスタイルを、好意的に受け止めてくれる女性もいたそうです。
そのうちの一人であるベトナム人女性とは、約3年半にわたって交際しました。
しかし、親しくなれば文化の違いがなくなるわけではありません。むしろ、関係が深まるにつれて、今まで気づかなかった価値観の違いが見えてくることもあります。
例えば、人前でのスキンシップです。
ブラジルでは、街中で抱き合ったりキスをしたりすることに抵抗が少ない人もいます。一方、アランが交際した相手の中には、人前での愛情表現に慎重な人もいました。
同じ「好き」という気持ちを持っていても、それをどこで、どのように表現するかは人によって違います。
自分にとって自然な行動が、相手にとっても自然とは限らないのです。
さらに、彼は交際相手の家族との関係でも、文化の違いを経験しました。
あるとき、元交際相手の母親の顔にゴミがついていることに気づき、親切心からそれを取ってあげようとしたそうです。
ところが、相手には目上の人の顔に触れること自体が失礼に感じられ、怒られてしまいました。
アランに悪気はありませんでした。しかし、本人が親切だと思ってした行動でも、相手の価値観によっては失礼に受け取られることがあります。
また、ブラジル人男性に対して「遊び人なのではないか」という先入観を持たれることもあり、真剣な交際を望んでいると理解してもらう難しさも感じたそうです。
国際恋愛では、相手本人を知ることに加えて、その人が大切にしている家族や習慣、価値観を理解していくことも必要なのですね。
「自分の足りない半分」ではなく、自立した二人でいる
約10年間のカナダ生活を通じて、アランの恋愛観にも変化が生まれました。
彼が大切にしているのは、恋人同士であっても、お互いの自由や個人の時間を尊重することです。
例えば、毎晩必ずビデオ通話をしたり、メッセージにすぐ返信するよう求めたりする関係は好みません。
恋人がいても、自分の趣味を楽しんだり、友人と遊んだりする時間は必要です。
もちろん、連絡を取り合う頻度については、カップルによって心地よいバランスが違います。毎日話したい人もいれば、数日に一度の連絡で十分な人もいるでしょう。
大切なのは、どちらかのルールを一方的に押しつけるのではなく、お互いが納得できる形を探すことです。
恋愛では、相手を「自分に足りないものを補ってくれる存在」と考えることがあります。英語では、恋人や配偶者を「Better Half」と表現することもありますね。
しかし、アランが理想とするのは、一人ひとりが自分の人生を持ち、自立した二人が信頼関係を築きながら一緒に歩んでいく関係です。
相手がいなければ幸せになれないのではなく、一人でも自分の生活を楽しめる。そのうえで、一緒にいることで人生がさらに豊かになる。
依存し合うのではなく、お互いの個性や自由を認め合う。そんな関係を大切にしているそうです。
素直な愛情と、相手を尊重する気持ち
アランの体験から見えてくるのは、恋愛において「自分らしさ」と「相手への理解」の両方が大切だということです。
好きなら、素直に好意を伝えてもいい。
でも、自分にとって自然な愛情表現が、相手にとっても心地よいとは限りません。
連絡の頻度やスキンシップ、家族との付き合い方など、違いがあれば、相手を否定する前に話し合ってみる。自分の希望も伝えながら、二人にとって無理のない方法を探していく。
そして、恋人だからといって、相手の時間や行動をすべて管理しようとしないことも大切です。
「恋愛の駆け引きに疲れたな……」と感じている人は、アランのように、素直な気持ちを伝えることと、お互いの自立を尊重することを意識してみてもいいかもしれません。
恋愛に決まった正解はありません。
だからこそ、国籍や文化の違いだけで相手を判断するのではなく、目の前の人が何を大切にしているのかを知ることから始めたいですね。



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