「車のドアを開けてくれるなんて、なんて親切な人なんだろう!」
……最初は、そう思ったそうです。
僕には、ドイツ出身の大切な友人、リサ(仮名)がいます。ある日、恋愛や文化の違いについて話していたとき、彼女がアメリカへ留学していた頃の「人生初のアメリカ人男性とのデート」について教えてくれました。
ドイツでのデートでは、現地集合・現地解散が一般的だったというリサ。だからこそ、男性が車で自宅まで迎えに来てくれたことは、新鮮でうれしいサプライズだったそうです。
ところが、デートが進むにつれて、彼の親切な行動に少しずつ違和感を覚えるようになりました。
同じ行動でも、育った文化や価値観が違えば、受け取り方も変わるもの。
今回は、リサがアメリカで経験した恋愛のカルチャーショックをご紹介します!
「優しさ」か「男らしさへのプレッシャー」か?
デート中、リサが車から降りようとすると、男性は「ちょっと待って!」と急いで反対側へ回り、ドアを開けてくれました。
歩道を歩くときも、必ず自分が車道側を歩こうとします。
もちろん、こうした行動をうれしく感じる女性もいるでしょう。
しかし、男女平等を大切にして育ったリサには、「そこまでしてくれなくても、自分でできるのに……」と感じられたそうです。
そして、彼女が特に驚いたのは、食事の会計でした。
リサが「今回は私が払うね」と申し出ると、男性は支払い自体には同意しました。ところが、ひとつお願いをしてきたのです。
「クレジットカードをテーブルの下から渡してくれない? 僕が払っているように見せたいから」
理由は、女性にお金を払わせている姿を周囲に見られるのが恥ずかしいから、というものでした。
彼は、女性を大切に扱おうとしていたのかもしれません。
一方、リサには「男性はこう振る舞うべきだ」というプレッシャーのように感じられました。
ここで大切なのは、ドアを開けることや男性が支払うこと自体が、良い・悪いという話ではない点です。
相手を気遣って行動することと、性別によって役割を決めつけることは、似ているようで違います。
リサの経験は、恋愛における「優しさ」の意味が、人によって異なることを教えてくれます。
リサが驚いたアメリカの恋愛文化5選
① 突然連絡が途絶える「ゴースティング」
リサが戸惑ったことのひとつが、突然連絡が途絶えてしまう「ゴースティング」です。
それまで普通にメッセージをやり取りしていたのに、ある日を境に返信がなくなる。理由の説明もないまま、関係が終わってしまうのです。
リサにとっては、もう会うつもりがないのなら、そう伝えるほうが誠実に感じられました。
もちろん、相手に危険を感じる場合など、連絡を絶つことが自分を守るために必要なケースもあります。しかし、そうでない場合、何も説明せずに姿を消されるのは、残された側にとってつらいものです。
相手を傷つけたくないから何も言わない。そんな気持ちもあるのかもしれませんが、説明がないことで、かえって相手を悩ませてしまうこともあります。
② 「君は世界で一番美しい!」という褒め言葉
出会ったばかりなのに、「今まで会った中で一番美しい」「こんな素晴らしい女性には会ったことがない」と、最上級の褒め言葉を並べる男性もいたそうです。
褒められれば、誰でもうれしいものですよね。
ただ、まだお互いをよく知らない段階でそこまで言われると、リサは「本当にそう思っているの?」と疑問に感じたといいます。
気持ちを大げさな言葉で伝える人もいれば、時間をかけて信頼を築くことを重視する人もいます。
言葉の熱量が、そのまま気持ちの深さを表しているとは限りません。相手の言葉だけでなく、日々の行動にも目を向けたいところです。
③ 「私たち、付き合っているの?」という疑問
恋愛関係の定義についても、戸惑いがありました。
アメリカでは、正式に恋人になる前に、複数の相手とデートを重ねる人もいます。そして、二人がほかの人とはデートしないと確認し合うことを「Exclusive」と表現します。
こうした確認を、リサは最初から意識していなかったそうです。
彼女にとっては、何度もデートを重ねて親しくなれば、自然とお互いに相手を一人に絞っていく感覚がありました。
ところが、相手にとっては、正式に話し合うまでは恋人関係が確定していなかったのです。
「じゃあ、今まで私たちはどういう関係だったの?」
そんな疑問が生まれるのも無理はありません。
何度デートしたら恋人なのか。ほかの人と会ってもいいのか。
こうしたことに、世界共通のルールはありません。だからこそ、関係が深まってきたら、お互いの認識を確かめることが大切です。
④ はっきり伝えるか、遠回しに伝えるか
リサは、自分の考えを率直に伝えることを大切にしていました。
例えば、服が似合わないと思ったらそう伝える。意見が違えば、どこが違うのかを話し合う。彼女にとっては、率直さが相手への誠実さにつながっていたのです。
一方、アメリカでは、相手を傷つけないように、遠回しな表現を使う場面もありました。
例えば、相手の提案に対して「That’s interesting.(面白いね)」と返したとしても、それが賛成を意味するとは限りません。
リサからすると、「結局、賛成なの? 反対なの?」と戸惑うこともあったそうです。
もちろん、アメリカ人がみんな遠回しに話すわけでも、ドイツ人がみんな率直なわけでもありません。
ただ、相手への配慮として曖昧な表現を使う人と、明確な言葉こそ誠実だと考える人では、同じ会話でも受け取り方が変わります。
⑤ 恋人同士の自由と、結婚への考え方
パーティーでの振る舞いにも、違いを感じることがありました。
リサにとって、恋人と一緒にパーティーへ行っても、それぞれ別の人と会話を楽しむのは自然なことでした。お互いを信頼していれば、ずっと隣にいる必要はないと考えていたのです。
しかし、相手によっては、恋人がほかの男性と長く話していることを気にする場合もありました。
どこからが単なる会話で、どこからが相手を不安にさせる行動なのか。その境界線は、人によって異なります。
同棲や結婚についても同じです。
一緒に暮らすことを、結婚に向けた大きなステップと考える人もいれば、結婚するかどうかとは別に、まず共同生活を経験したい人もいます。
国や地域による傾向が語られることはありますが、実際には家庭環境や個人の価値観による違いも大きいものです。
だからこそ、相手も自分と同じ考えだと思い込まず、将来について話し合うことが必要なのですね。
国際恋愛で一番危険なのは「暗黙の了解」
リサの体験を聞いていて、僕が感じたのは、恋愛でのすれ違いは、必ずしも気持ちが足りないから起こるわけではないということです。
男性が車のドアを開けるのを「大切にされている」と感じる人もいれば、「自分でできるのに」と感じる人もいます。
連絡を頻繁に取り合うことに安心する人もいれば、お互いの時間を尊重するために、少し距離を置きたい人もいます。
どちらか一方が必ず正しいわけではありません。
問題になるのは、「普通はこうするでしょ?」と、自分の当たり前を相手にも求めてしまうことです。
例えば、こんなことを確認してみるだけでも、すれ違いを減らせるかもしれません。
- 「私たちは、今どんな関係だと思っている?」
- 「ほかの人ともデートしている?」
- 「デートの費用はどう分担したい?」
- 「恋人同士でも、一人の時間はどれくらい必要?」
少し聞きにくい質問もあるかもしれません。でも、曖昧なまま悩み続けるより、落ち着いて話し合ったほうが、お互いを理解できることもあります。
国際恋愛に限らず、恋人は自分と同じ価値観を持っているとは限りません。
違いを知ることは、相手を否定するためではなく、二人にとって心地よい関係をつくるための第一歩です。
「普通はこうでしょ?」ではなく、「あなたはどう考えている?」
そんな一言から、お互いの理解が深まるのかもしれませんね。



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