アメリカに来たばかりの頃、自分の中では、「救急車って、命のために呼ぶもの」だったんです。
いや、今でももちろんそうなんですけど、少なくとも日本にいた時の感覚では、“お金を気にして呼ぶか迷うもの”ではなかった。
体調が悪くなったら、迷わず119番。 そこには1ミリの迷いも、財布の心配も入る余地なんてなかった。
それが当たり前だったんです。 でも、アメリカで生活してると、その感覚が普通に壊れます。
しかも、何の前触れもなく、わりと突然。
目次
- 突然届いた120万円の請求書
- 診断結果とアメリカの医療現実
- 「普通」が壊れて見えた世界
突然届いた120万円の請求書
ある日、友達の息子さんが家で倒れました。
本当に急に。
リビングのソファで普通に過ごしていたはずなのに、いきなり崩れ落ちるように。
その時のリアルな状況を後から聞いた時、こっちも普通にゾッとしたんですよ。
目の前で自分の子供が急に倒れるなんて、想像しただけでも血の気が引くし、パニックにならない方が無理。
で、友達は震える手で、すぐ救急車を呼んだ。
激しいサイレンを鳴らしてやってきて、近くの大きな大学病院にそのまま搬送。
その流れだけ聞くと、
「ああ、本当に大変だったんだな」
「ひとまずは良かった」って、
そこで普通は終わる話なんですけど。
問題は、完全にその後でした。
後日、家に一枚の紙切れが届いたんです。
それが、救急車の請求書。
そこに書かれていた金額、120万円。
いや、最初マジで意味が分からなかった。
「え?ちょっと待って、救急車だけで?ただ病院まで走っただけだよね?」って。
あまりの数字のデカさに、脳が一回完全に止まるんですよ。
フリーズする。
で、現実を受け止められなくて、桁を何度も読み直す。
一、
十、
百、
千、
万……
って、指で画面か紙をなぞりながら数えちゃう。
何回見ても、どうひっくり返しても120万円。
話を聞いていた部屋の空気、変な感じになりました。
なんかもう、誰もまともなリアクションができない。
「高っ!!」とか「嘘でしょ!?」みたいな、
テレビのバラエティ番組みたいな軽いノリじゃないんですよ。
全員がただ静まり返って、「……え?」ってなるやつ。
声のトーンが全員低くなって、顔が引きつるあの独特の空気。
診断結果とアメリカの医療現実
ただ、話はそれだけじゃなかったんです。
実はその息子さん、もっと前から体調がおかしかったらしい。
以前、まだ別の小さな田舎町に住んでいた頃。
何度も頭痛や体調不良を訴えて、近くの病院に行ったことがあったそうです。
でも、その時の医者の診断は、「ちょっと疲れてるだけだね。安静にしてれば大丈夫」みたいな、本当にどこにでもあるような、軽い感じのあしらわれ方だったらしい。
だから家族も、もちろん心配はしつつも、「専門のお医者さんがそう言うなら、そういうものなのかな。気にしすぎかな」って、自分たちを納得させるように受け止めてた。
まさかそんな重大な病気が隠れてるなんて、これっぽっちも疑わずに。
でも、一年後。 サンフランシスコの郊外に引っ越して。
そして、家で倒れる。
搬送先の大学病院で、今度は徹底的に精密検査をした結果。
脳腫瘍だった。
そこから、即手術。 迷っている時間なんて一秒もない。
この話を聞いた時、自分、かなり頭が混乱したんですよ。
「え、じゃあ前の病院では本当に分からなかったの?」とか。
「そんな見落としみたいなこと、普通にある?」とか。
いろんな疑問が、頭の中でずっとグルグル、グルグルしてた。
医療ミスなのか、それともアメリカの医療格差的なものなのか、自分にはサッパリ分からなくて、ただただ理不尽さにゾッとする。
しかも、さらに衝撃だったのが、最終的に請求された医療費の総額。
一億円近かったらしい。
いや、もう映画の世界かと思った。
本当に。
一億円って何?
日常生活で、しかも個人の治療費として出てきていい数字の枠を超えてるだろ、って。
ただ、そこもまた、アメリカの複雑でよく分からないところで。
救急車代の120万円は、なぜか全額自己負担。
でも、それ以外の高額な治療費や手術費、入院費なんかは、入っていた保険会社がほとんど負担してくれたらしい。
最初この話を聞いた時、正直、自分の中では感情がぐちゃぐちゃになって、全然整理できなかった。
「救急車だけで120万って、システムとして高すぎるだろ……」って絶望的な気持ちもあるし。
「でも、一億円をほぼカバーしてくれる保険って、それはそれで凄すぎるだろ……」って妙に感心する気持ちもあるし。
なんかもう、日本の常識の物差しじゃ測れなくて、単純に“良い悪い”とか“正しい間違ってる”で語れなかった。
次元が違いすぎて、脳の処理が追いつかない。
「普通」が壊れて見えた世界
あと、地味にショックというか、精神的にガツンときたのが、周りのアメリカ人の反応。
「まあ、アメリカは救急車高いからね」って、コーヒーを片手にめちゃくちゃ普通に、サラッと言う。
いや待って。 “高い”の基準どうなってる。 120万円だぞ!
日本だったら、状態のいい中古の軽自動車が余裕で一台見えてくる金額だぞ!って心の中でずっと激しくツッコんでた。
海外に住むと世界の見え方が少しずつ変わっていくんですよね。
だから、海外生活は面白い!


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